「インプラント周囲炎」という病気をご存じですか?これは、天然歯における歯周病と同じ病気です。インプラント自体はチタンやセラミックという人工物でつくられているため虫歯になることはありませんが、歯周病は歯周組織の病気であるため、インプラントでも発症するリスクがあるのです。
インプラント周囲炎とは、歯ぐきとインプラントの間にたまったプラーク(歯垢)に棲む細菌が毒素を出すことによって、歯ぐきに炎症が起き、インプラントを支えるアゴの骨が溶かされてしまう病気です。これが進行すると、インプラントはグラつき始め、治療せずに放っておくと最終的には抜け落ちてしまいます。
つまり、天然歯における歯周病と同じことが、インプラントにも起きるということ。さらには、インプラントを維持している歯周組織は天然歯より細菌に感染しやすいこと、また神経のないインプラントは異常に気づきにくく知らないうちに悪化してしまう傾向があることなど、インプラントゆえのリスクもあると言われています。
せっかく手術をして埋め込んだインプラントをインプラント周囲炎で失わないために、日頃のブラッシングや定期検診を忘れないようにしましょう。
インプラント周囲炎が見つかったら、早めにその進行を食い止める必要があります。まずは進行状態を検査し、その段階に適した治療を行っていきます。
インプラント周囲炎の検査
ポケットの深さの測定 | ポケット(インプラントと歯ぐきの間の溝)の深さを測定します。深くなるほどインプラント周囲炎が進行しているといえます。 |
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インプラントの振動値の検査 | インプラントのグラつきの度合いやネジの緩みを検査します。振動値が高いほどインプラント周囲炎が進行しているといえます。 |
細菌検査 | 細菌の増殖度合いを調べます。 |
CT撮影による検査 | アゴの骨がどれだけ侵食されているかを検査します。 |
このほかに、出血や膿などの状況、咬み合わせの確認などを行い、インプラント周囲炎の進行段階を調べていきます。
進行段階に適した処置とは
インプラント周囲炎が悪化すればするほど、ポケットは深くなります。その深さに合わせて処置を行っていきます。
ポケットの深さ | 処置 |
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3mm以下 |
PMTCなどの処置によって、ポケット内のプラークや歯石を除去します。 |
4~5mm |
PMTCに加えて、薬剤を用いてポケット内を洗浄・消毒します。 |
5mm以上 |
症状が出血のみ:PMTCと薬剤による洗浄・消毒を行います。 出血に加え、アゴの骨の侵食がみられる場合:上記の処置に加え、患部または全身に抗生剤を投与し、インプラントにこびりついた歯石、感染した歯肉を、外科的処置によって除去します。症状がひどい場合には一旦インプラントをとりはずし、骨の再生手術を行うこともあります。 |
インプラント周囲炎は原因がわかっているため、予防できる病気です。ご自宅でのブラッシングに加えて歯科医院での適切なケアで口腔内を清潔に保てていれば、インプラント周囲炎の発症率を大幅に下げることができます。またインプラント周囲炎は、初期に自覚症状のない病気です。症状をできるだけ早く食い止めるためにも、定期検診は欠かさず受けるようにしましょう。